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2014年 第7回全日本最優秀ソムリエコンクールに挑戦して(4)
10.博多での再会
本戦前日。
夕方頃博多に到着し、ホテルのチェックインを済ませ、一人で夕食に出かけようと外に出たところ、リッツ・カールトン時代の元同僚であり、今回の本戦出場者の一人である野坂昭彦氏とばったりと遭遇。
せっかくの機会、一緒に夕食に行こうということになり、ホテル近くの定食屋で、二人食事を共にした。
彼は現在、香港に在住し、K.Oダイニング レストラングループの統括シェフソムリエを務めている。
リッツ・カールトンで共に働いていた頃は、互いに日々切磋琢磨し、コンクールにもお互い積極的に参加し、凌ぎを削ったライバルであり、最良の友でもあった。
仕事以外の場面でも、頻繁に家族ぐるみで外食をしたり、勉強会をしたりと、公私共に一番仲良くしていた友人だった。
時を越えて、今回このような大舞台を共にできるという喜びは、今回コンクールに挑戦してきたことで得ることのできた、大きな副産物である。
今大会でも、強力なライバルとなる人物であることは間違いない。
とはいえ、久しぶりの再会に、当時の話や、現在の仕事、そしてコンクールの準備に向けての話に花が咲き、本戦を前にして、とても有意義な時間を過ごすことができた。
リラックスした会話をしながらも、やはり相当な努力と準備を積み上げてきたことが、彼の雰囲気やオーラに滲み出ていた。
11.本戦開始
日本全国から選ばれた30名のソムリエ達。いよいよこの博多の地で、戦いの火ぶたが切って落とされた。
まずは、筆記試験。
答案用紙をめくり、一斉にスタート。
全て選択言語による記述式での解答となっている。
フランス語を選択した私は、予選と同様に、解ける問題をリサーチしながら、順調にペンを走らせていった。
が、しかし、、、
ついにそのペンが止まる。
予選ですら、あの難問の連続。
それ以上の難解度の問題はおそらく、そう多くはないであろう、それ以上に掘り下げた問題を作成すること自体が難しいのではないか、という私の予想を凌ぐ、難解度MAXの問題が、容赦なく続いていく。
「ベルギーに存在するA.O.C.を6つ記述しなさい。」(実際は、フランス語での出題)
予選を終えてからも、さらに更新を重ねた自身の分厚いノート群。
そのどこにも記述されていない内容を、いくつも目の前にし、久しぶりの「冷や汗」を流すこととなった。
筆記試験終了の合図。
周りを見渡すと、有力なライバル達を含め、皆、相当顔色を悪くしている。
どうやら日本のトップソムリエ達をもってしても今回の問題は、相当な分厚い壁だったようだ。
そして問題を回収された後の、田崎さんの一言。
「大丈夫。みんな全然できてないから。」
ユーモアを交えて放たれたこの言葉を聞いた瞬間、選手達から、苦笑いとも言える笑いが起こった。
続くブラインドテイスティングは、白赤2アイテムを、計20分間。
各A4用紙の白紙に、びっしりとフルコメントで記述していく。
もちろんこれも選択言語での解答だ。
一瞬でもペンを止めると、制限時間内に最後まで行き着くことは不可能。
香り、味わいをとりながらも、ペンを走らせながら、そのワインの正体をつきとめていく。
この短い限られた時間の中で分析した結果、私の解答は、
白:「Chablis 1er Cru 2009」。
赤:アメリカ カリフォルニア ナパの「Zinfandel」
まさか全日本のコンクールの本戦で、シャブリは出ないのではないか?という気持ちに左右されながらも、自分を信じ、勇気を出した結果。
答えはなんと「Chablis 2006」であった。
熟成のニュアンスから1er Cru の少し熟成したタイプと捉えてしまいはしたものの、ほぼ分析は間違っていなかったようだ。
赤に関しては、ずばり正解。
ジンファンデルは、予選も含め、ずっと苦しめられてきた品種であったが、ついにこの大舞台にきて、的確に解答することができた。
あとは、フランス語での記述コメントをしっかり評価してもらえれば、かなりの高得点を期待できるだろう。
そして続く、スピリッツ、リキュール系のブラインドテイスティング。
3アイテムの原材料、タイプ(銘柄)を、選択言語でずばり記述していく。
時間は、合計でわずか3分。
一瞬で判断できなければ、即タイムアウトとなる。
ここでは2アイテムを正解し、得意とするテイスティングに関しては、我ながら、かなりの好成績を期待できる内容で終えることができた。
12.ルームサービス
そしていよいよサービス実技。
ソムリエコスチュームを着るか迷ったが、今回は、やはり現場でのユニフォームそのままが一番と判断し、黒のスーツにネクタイ、スワロフスキーのブドウのバッジをつけての出場。
磨きぬいた黒い革靴を履き、短く切った髪をしっかりとセットして臨んだ。
課題は、「ホテルでのルームサービス」。
「ヴェルディッキオを、各指定の部屋に運び、ゲストにサービスしなさい」というものだった。
過去に例を見ない課題。
はじめ一瞬、どう進めればいいのか理解できていなかったが、周りのセッティングを確認し、なるほど、そういうことか、と自分なりに解釈をした。
しかし、ここで決定的となる、大きなミスをしていたことに、後で気づくこととなる。
まずは、サービスワゴンの上に、部屋でサービスするためのツールをセット。
その後、そのワゴンを押しながら、エレベーターを使い、指定されたルームナンバーの部屋へとワインを運んでいく。
「Bon Jour!」ノックをして、ワゴンと共に部屋へと入っていくと、二人の審査員が待ち構えていた。
「それでは、2分以内にサービスをしてください。」(選択言語にて)
それだけ言われると、すぐに、白ワインのサービスへと移る。
「2分以内」ということは、相当なクイックサービスと判断。
デカンタを持ってきてはいたものの、「デカンタージュをしたら間に合わないのではないのか?」「ましてこの白ワインは、デカンタの必要性はないだろう。」ということを瞬時に考え、プレゼンテーションをした後、即座に抜栓し、二名のゲスト(ここでは審査員)へのサービスを終えた。
合図がかかるまで、そのワインの説明を加えていき、実技の課題は、あっという間に終了した。
続く・・・